「現代かなづかい」の制定(その七の6)

  一方、假名遣主査委員會は、二十一年六月十一日より九月十一日までに十二囘の會議を開き「現代かなづかい」を制定し、九月二十一日の國語審議會第十一囘總會に提出した。その主査委員は、安藤正次(委員長)、有光次郎、時枝誠記、山本有三、神保格、金田一京助、清水彌太郎、河合勇、井手成三、藤村作、小幡重一、東條操、松坂忠則、佐伯功介、長沼直兄、石黒修、岩淵悦太郎、西尾實、服部四郎、宮川菊芳の二十名であつた。同案に贊成した者は、委員七十名中五十三名で、五十三名中十二名が委任状によるものであつた。

「現代かなづかい」の特徴は、國語と字音假名遣を一本にし、「現代語音にもとづいて、現代語をかなで書きあらわす場合の準則を示したもので」、適用範圍を口語文に限つたこと、長音には同列の「あ、い、う、え」を用ゐるが、オ列には「う」を用ゐたこと、助詞の「は、へ、を」は從來のままとしたこと、「ぢ、づ」は「じ、ず」とするが、二語の連合及び同音の連呼により濁るものは「ぢ、づ」としたこと、おおきい(大)、こおり(氷)、とおる(通)のやうに「オ」に發音される「ほ」は「お」と書き、拗音には「や、ゆ、よ」、促音には「つ」を右下に小さく書き、「言ふ」を「いう」としたことなどである。

  右の「現代かなづかい」及び「當用漢字表」は、昭和二十一年十一月十六日、内閣訓令・告示により同時に公布された。内閣訓令第八號には「國語を書きあらわす上に、從來のかなづかいは、はなはだ複雜であつて、使用上の困難が大きい。これを現代語音にもとづいて整理することは、教育の負擔を輕くするばかりでなく、國民生活能率をあげ、文化水準を高める上に、資するところが大きい」とあり、訓令第七號には「從來、わが國において用いられる漢字は、その數がはなはだ多く、その用いかたも複雜であるために、教育上、多くの不便があつた。これを制限することは、國民の生活能率をあげ、文化水準を高める上に、資するところが少なくない」とある。


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