佐久間鼎の改定音圖と資源の標準用語整備(その六の39)

  昭和十六年二月、島田春雄の『明日の日本語』と長谷川誠也の『國語國字及び文字の心理研究』が刊行された。前者は「民族と言葉」「漢語と日本語」「文字と文章」「文體と話體」「全日本の言葉」の五章から成り、後者は「心理研究ノート」「國語國字の諸問題」「學藝雜記」の三篇から成つてゐる。
また同十六年三月に佐久間鼎の『日本語の特質』が刊行された。佐久間はその中で、歴史的假名遣では「は行」及び「わ行」で整然としてゐるものが、發音式假名遣にするとこれが混亂すると考へるのは、つまり從來の五十音圖を規準にしての活用論であるからだとして、現代の日本語に適したやうに五十音圖を改訂する必要があると説き、拗音、濁音、半濁音、撥音等も含めた「改定音圖」といふものを提唱してゐる。そして、それによつて活用語の語尾變化を説明しようといふわけである。

  同十六年三月二十七日、企晝院より「資源ニ關スル標準用語整備ニ關スル件」が發表され、その原案の作成が全日本科學技術團體聯合會(理事長・長岡半太郎)に委囑された。その原案作成要領の第一項には「標準用語整備ノ方針ハ曩ニ内閣ヨリ告示セル標準用語ヲ改訂増補シ弘ク資源關係全般ニ亙リ之ガ整備ヲ圖ルモノトス」とあり、第二項には「全日本科學技術團體聯合會ニ標準用語總務委員會ヲ、其ノ各專門部會ニ專門別委員會ヲ設ク」とあり、これに基づき、標準用語總務委員會、及び敷き數學物理、地質鑛物採鑛冶金、動物、植物、土木建築、化學、機械、電氣、醫學等の專門別委員會が組織され、標準用語の整備に着手したが、決定的成案を得るまでに至らなかつた。


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