内閣官報局編及び中根淑の送假法 (三の23)

  明治二十七年五月に出た内閣官報局編の『送假名法』は、二十二年官報局内部の便宜のために印刷した『送假名法』(二十年)に多少修正を加へたものである。その内容は、濱田健次郎の『副假名法規』を骨格としたもので、總則の二原則と二變則は全く同一である。また各品詞についての細則は全部で二十三則まであり、その各々に「釋例」を附した極めて整然としたものである。その例を動詞にとると、「凡ソ動詞ニ四種アリ(第一)本然動詞(第二)延長動詞(第三)短縮動詞(第四)合成動詞是ナリ」、その送假名は「第十則 本然動詞ハ總テ其語尾ノ變化スル所ヨリ寫シテ送假名トス但シ同字異樣ノ訓義アルモノニシテ其語尾同一ナルトキハ便宜一字ヲ増附シテ送假名トス   第十一則   延、縮兩種ノ動詞ハ延ヒタルモ約リタルモ共ニ其語尾ヲ寫シテ送假名トス   第十二則   合成動詞ハ總テ下ニ連リタル詞ノ語尾ノ變化スル所ヨリ寫シテ送假名トス」といふものである。

  その翌二十八年十月に出た中根淑の『送假名大概』は、九年の『日本文典』の送假名法を基にしたもので、その特徴は、例外が多くては記憶に不便であるから例外を認めないといふ方針をとつたことにある。隨つて、慣用の送假名と比較すると、全體として假名を多く送る傾向がある。中根はその「凡例」において

  * 一   漢字ニ送リ假名ヲナスハ、本讀ミ易カラシメンノ趣意ナレバ、送ル送ラザルノ分別シ難キ者ハ、總テ送ル方ニ定ム、

     一   動詞ニテ一タビ定リタル送リ假名ハ、名詞副詞接續詞等ニ變ズルトキモ、其ヲ改ムルコトナシ、

  と述べてゐる。また書類の書式が「請取」で、文章の書式が「請ケ取リ」であつても一向に差支ない、「文章ト日用ノ書類ト必ズ一致セシメント欲スルハ、最モ心得難キコトナリ」と述べてゐるが、兩者が完全に一致する必要はないが、敢てその差を大きくする必要もない。慣用が成立してゐるといふことは、立派に通用してゐることを證明してゐることなのであるから、なるべく慣用に從ふやうにすべきであらう。

 


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