「文字ヲ改換スル議」二の6

 
  翌五年四月には、再び南部義籌が「文字ヲ改換スル議」を文部省に提出した。前文に「脩國語論」の要旨を掲げ「只其之ヲ改換スルノ甚難事ニアラサル所以ト其着手ノ順序トヲ論スルコト左ノ如シ」と述べ、「第一條  音ヲ正シ文字ヲ定ムル事」「第二條  文章ヲ解剖シ辭ノ種類ヲ議定スル事」「第三條  文法書辭書ヲ編制シ且童子二讀マシムル爲メ要用ノ書ヲ綴り直ス事」の三條について論述してゐのであるが、その第三條において、ローマ字だけで書いて意味のとりにくいものには漢字の註をつけ、その漢字を徐々に減じて行けば「十年ヲ出デズシテ其法必ズ全備シ一切漢字ヲ廢スト雖モ支障ナキニ至ル可シ」といふのであるが、ここで既に耳で聞いただけで理解できる文章を主張してゐるのは面白い。文字は耳で視るためのもので、目で讀んで理解し易い文章は惡文といふことになるらしい。


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